洗腸によって生活の制限がなくなり、
充実した毎日を送っています

赤木さんは、大学生の頃にバイク事故で胸髄を損傷されましたが、吉備高原医療リハビリテーションセンターへ転院してから日常生活の自立のためにリハビリに取り組まれ、今は自立した生活を送られています。最も困っていた排便管理について、どのようにして、自分にあった方法を見つけたのか、現在の状況についてお話いただきました。

対談動画:赤木 哲也さん×吉備高原医療リハビリテーションセンター 院長 古澤一成先生
<前編>(9:00)
<後編>(12:53)

赤木 哲也さんと主治医である吉備高原医療リハビリテーションセンター 院長 古澤一成先生の対談です。
最も困っていた排便管理について、どのようにして、自分にあった方法を見つけたのか、現在の状況等についてお話いただきました。

自立した生活や社会復帰が出来るとは思わなかった

大学生の時にバイクで事故をしまして、その時に胸椎の圧迫骨折と脊髄の完全麻痺があり、両下肢麻痺になりました。最初の病院での処置が終わり、吉備高原医療リハビリテーションセンター(以後、吉備)へ転院しました。吉備で、転院後最初に自立するための計画書を作っていただいたことが驚きでした。それからリハビリを頑張って、社会復帰をすることが出来ました。そのときにはこんなに充実できるとは思っていなかったので、本当にびっくりしました。今では、全てのことを自分で行っています。

洗腸に至るまでの排便管理

吉備に入院したときには、最初は坐薬を使って排便をする方法を教えてもらいました。洗腸に至るまでは、10年間坐薬を使った排便管理を行いましたが、坐薬は時間の使い方が非常に難しかったので、先生に相談をして変更しました。次に15年間は浣腸で排便していました。ただ浣腸でも時間を有意義に使うことができなくて、便が漏れたりすることもしばしばでした。
本当に悩んでいたため、人工肛門の手術について、先生に相談したり、愚痴を言ったりしたときに、洗腸療法があることを教えてもらいました。最初は洗腸療法にすると入院しないといけないとか、手技をマスターするのも時間がかかると思い、なかなか受け入れることはできませんでした。1回坐薬から浣腸に変えたときも、すごく抵抗がありましたが、何かのときに変えて試したら、少し良くなったことがあったので、今回、洗腸の話をもらったときにも、すごく抵抗はありましたが、ちょっとチャレンジしてみたいなと思い、踏み切ってみました。

排便管理の一番の悩みは「時間管理」

排便に関して、一番悩んでいたことは、やはり時間を管理することが難しいことでした。
排便が30分や1時間で終わるのであれば、もっとうまく生活はできたと思います。
洗腸をする前は、先生と薬の相談をしながら、毎日2-3時間便座に座って摘便で排便管理をしていました。摘便をすると、切れ痔になって便に血が混じるし、自律神経過反射で汗が出てびしょびしょになっていました。また、自律神経過反射の症状がたくさん出たときには、排便後の血圧低下もひどかったように思います。

排便管理方法を変える勇気ときっかけ

実際に、洗腸を導入するときはスタッフから多くの説明を受けました。本当にあの洗腸の手法や操作とかでうまくいくのかなとか、腸の中にお湯を入れるとか、カテーテルをお尻から入れるとか、そういう手技の1つ1つにすごく抵抗がありました。
ただ、やはりスタッフの方に色々アドバイスをいただき、手技を教えてくれるスタッフの方が、「大丈夫」と言ってくれたことで、前に進むことが出来ました。
でも、やっぱり1回目2回目はそんなに簡単にはいきませんでした。ときには、本当に上手くいくのかとすごく不安もありました。洗腸をしていくうちに手技を覚え、上手く排便ができた経験をしたときに、本当に変わりました。やっぱり成功体験があって、それがすごく大きかったなと振り返って思いました。

洗腸をしてよかったこと

排便をする時間が短くなったことが、最も良かったことです。毎日2-3時間かけてやっていた排便を今は1日置きで、日によってはもう少し時間を空けるなど、調整が簡単にできるようになりました。また、摘便をしなくなったことがすごく楽で、切れ痔もいぼ痔もなくなりました。
本当に不思議ですが、自律神経過反射も、完全になくなりました。汗をかくことがないのも良かったです。夏でも冬でも常に汗をかくので、風邪をひくことが多かったのが、それがなくなったので、自分の体にかける負担がものすごく減ってきたことが大きいです。
やっぱり、摘便・坐薬・浣腸などは、体に負担が大きくかかることがあり、翌日に疲れが残ったりするので、朝起きれないとか、血圧の低下などがありました。そのことは、職場とか会社の一般の人にどんなに説明しても、わかってもらうことが難しいと思います。そして排便がうまくいかないときもたくさんありました。
洗腸は、必ず便が出るので、洗腸のスケジュールが組みやすく、時間も1時間というところが、生活の中で取り込みやすいです。
あとはスポーツをするときに、洗腸していると、便がしっかりと出るので、スポーツをするときの体がすごく楽です。具体的に言うと、洗腸で排便をするときは、体への負担が少ないです。以前は、大会前とかマラソン大会当日とかでも、前日に排便をするとそれだけで不思議なことに結構疲れていました。
翌日大会に出たとしても、体がつらい、しんどいなという疲労感が結構あったのが、洗腸してからは、そういう疲れはなくなりました。

何も制限せずに食べたいものを食べられるようになった

旅行のときに、便を気にして、食事制限をされている人はたくさんいると思います。食事制限だけでなく、水分量もすごく制限されていると予想します。車椅子の方と一緒に旅行をしていますが、やはり洗腸をしていない人は食事制限、水分制限をされている方がいるようです。
僕も今まで洗腸する前までは食事制限と水分制限はものすごくしていました。下痢止めをたくさん飲んで浣腸するという矛盾したスケジュールで排便をしていました。本当かっていう話ですけれども、洗腸することによって、本当に食べたいものを食べるようになって、きちんと便が出るため、旅行したときにも、一緒に行った人と同じ楽しみ方で楽しむことができるようになりました。
洗腸してからは、失敗してもいいやと思えるようになりました。好きなように食べたり飲んだりして、仮に失敗したとしても、洗腸後の便失禁は、量がすごく少なく、水っぽいものが多く繊維状の便は出てこないからです。
便失禁したときには、今までは外出先の場合には、絶対家に戻らないといけない状況で、すごく大変でしたが、洗腸をしているとそのリカバリーがすごく簡単になりました。

排便によって何かの制限をされている方には挑戦してほしい

洗腸は、誰にでも勧めるというよりは、排便によって何か生活が制限されている方には、1回はチャレンジしてほしいなと思います。
洗腸によって、何か制限されていることがクリアできることがあるかもしれません。
また、将来的に自分が年を取ったときに、もしかしたら更に障害が重くなり、介護を受けるかもしれません。そのときに、摘便を誰かにしてもらうことに、自分は抵抗感があります。
それよりは、洗腸で間接的に道具を用いて排便のサポートをしてもらうことの方が、自分の中でも抵抗感がないと思いました。老後に今よりも思うように体が動かなくなったときに備えて、今から洗腸に変更しておいて、よかったなと思います。

インタビュアー :吉備高原医療リハビリテーションセンター 院長 古澤一成先生

プロフィール

赤木 哲也

47歳/元公務員/脊髄損傷

大学時代にバイク事故で胸髄損傷(T4)となり、両下肢の完全麻痺となる。
現在は、マラソンや旅行などやりたいことを行い、食べたいものを食べ、日常生活を満喫している。