洗腸に出会って排便を
コントロールできるようになりました

畠山さんは、18歳で先天性の潜在性二分脊椎と診断され、それまでは健常者として生活していました。大人になってから排便でつらい思いをされていましたが、洗腸に出会ったことで、排便をコントロールできるようになりました。その後大きく生活も変わり、現在はご自身の経験を活かしながら代表取締役として障害者の就労支援に従事されています。
ご自身の病気について教えてください
生まれたときは気づかなかったのですが、18才の時に腰に腫瘍が出来て、潜在性二分脊椎と診断されました。きっかけは、18才になってから突然おねしょが始まり、おかしいと思って近くのクリニックに受診したところ、すぐに大きな病院を紹介されてその流れで腫瘍に気づき、病気が発覚しました。自分自身も18才までは健常者だと思って生活をしていました。
今までの排泄管理に関して
排尿はカテーテルを使って自己導尿をしています。排便については下剤を用いて1週間に1回排便をしていました。月曜日から金曜日まで普通に会社員として働いておりましたので、金曜日の夜から下剤を飲み始めて土日で1週間分を出すという形で行っていました。常にお腹が膨らんだ感じの不快感を月曜日から金曜日まで抱えて生活をする苦しさ、常に排便のことを考えていなくてはいけないという辛さがありました。土日の時間がトイレへ行くことで潰れてしまいますし、あとは、夜漏れてしまうことがあって、漏らす度に嫌な気分になっていました。これが一番強い辛いことでした。
洗腸のきっかけは泌尿器科の先生、そして患者同士のSNS
自己導尿を管理している泌尿器科の先生から紹介を受けて、洗腸を初めて知りました。同じ病気を持っている人同士でSNSを使って情報交換を行っており、たまたま同じ治療をされている方がいたので、自分もやってみようかなと思ったことがきっかけです。

洗腸の失敗より排便をコントロールできるメリットの方が勝った
洗腸は5年前から実施しています。初めのうちはカテーテルをどの程度奥に入れるのか、お尻周りの神経が少し弱いためどこに挿入するのか、などがわかりづらかったです。あとは水を入れている最中のカテーテルの抜去や水漏れが、困ったポイントでした。
ただ、使用しているうちに、食事をとってから2時間以上あけると、抜けは少なくなる印象で、入れる水の温度が冷たいと一気にカテーテルが抜けるなど、5年間の中で失敗からわかったことがたくさんありました。
何より自分の中で、洗腸することで排便をコントロールできるところにメリットを感じていたので、多少の失敗は気にせずに、また洗腸すればよいだけなので、そこはメリットの方が勝っていました。
一番の工夫は、失敗してもやめないこと
洗腸頻度は2日に1回です。水の量は大体1L入れています。姿勢については、あまり工夫らしいことはなく、普通の大便をするときの座り方より少し前に座っています。あとはカテーテルをしっかり根元まで挿入するということくらいです。
食べ過ぎたときや繊維性のものを食べたときにガスがお腹の中に溜まったような感覚があるときも、臨時で洗腸することによってその症状が治まります。下剤で管理しているときは金曜日まで我慢することが普通でしたので、今では洗腸だけで解消できるのはすごく大きなことです。
たまに水が入りきる前にお腹が痛くなり、途中で洗腸をやめてしまうことがあります。ただ、いつでも洗腸できるという感覚を持ち、1回失敗しても時間を置くか翌日に行う、また、お腹が苦しくないときは1日空ける、今日は疲れたから明日の朝に洗腸する、など自由にコントロールができるようになったことが自分の中で一番大きな気持ちの変化でした。失敗しても洗腸のメリットの方が大きいので、やめてしまう判断は今のところ1回もありませんでした。一番の工夫は、失敗してもやめないことです。
日常生活における具体的な変化
日常生活で言うと、常に仕事をしている最中でも便の漏れを気にしたり、あとは会社員時代には替えの下着を毎朝用意していたり、会議の時間にお腹が痛くならないかとか、常に1日の半分ぐらいは排便のことを考えていました。自分の場合は、排尿も自己導尿ですので、時間を見ながら導尿をしつつ、便の方も不安があって、木曜日金曜日ぐらいになってくるとお腹の張りがひどく食欲もなくなります。精神的にもかなり落ち込んだ時期がちょうど5年前でした。洗腸に出会って、自分でコントロールができるようになったので、これによって生活は大きく変わり、精神的にも前向きになれて、仕事も大きく成績を伸ばすことができました。今の仕事も、ちょうど1年半前に会社を作り、障害者の就労支援を1年間運営しています。同じ病気の人も利用者さんとして来る中で、より実体験として相談に乗ることが出来るので、すごく良かったなと思います。
精神面では、夜しっかり寝られるようになりました。漏れを気にせず、朝まで眠れるようになり、精神的にも少しずつ安定してきました。この5年間便漏れは一度もありません。
家族や周囲の理解を得るための働きかけ
家族に関しては、家を建てたときに専用のトイレを作りました。家族には洗腸する前には1時間くらいトイレを占拠しますと声をかけるようにしています。また、以前は旅行も億劫でいけなかったけれども、今は洗腸セットを持参して旅行先でも洗腸しスッキリできています。
会社については、自分が働きやすいように勤務時間を5時間にするなど、同じように障害を持った方を雇用しているので、障害者に働きやすい環境を意識しています。自分が会社員時代に苦労したポイントを、自分の会社では苦労させないように配慮ができるような会社を目指して作りました。例えば、当時は勤務が終わった後の飲み会は基本的に出られない旨は上司に伝えておくとか、会議も2時間以上になる場合はインターバルを入れてほしい、導尿をすると5分ではトイレから帰って来られないので、必ず15分とってほしいということを会社にはお願いしていました。理由は特には聞かれませんでしたが、そのような部分では普通の人よりは少し苦労したと思います。
同じお悩みを抱える方々への一言
自分の意思で便意・尿意がないということは非常につらいことだと思います。尿意がなくなり、一番初めに主治医の先生に言われたことで、心に残っていることがあります。
「目が悪い人が眼鏡をかけるのと一緒だから、導尿もきちんとやりましょう」と言われました。その頃、私は18歳で、もう治りませんとか一生カテーテルで排尿してくださいなどと言われて、お先真っ暗になっていましたが、それを言われたときに納得できました。それから30年以上、特に内臓の疾患もなく生活できております。やはり普通の人のように尿意便意を感じてトイレに行くことはできないですが、逆に自分からコントロールをすることができます。排尿であれば自己導尿カテーテル、排便であれば洗腸という方法がありますので、ぜひ主治医の先生に相談をして、自分に合った方法を探してもらえればと思います。
また、最近はSNSによる患者同士の交流が多いですが、やはり排泄の悩みで困っている方が多いです。もっと早くに洗腸を知っていれば、早くに排便のコントロールが出来るようになっていたのではないかと思っています。もっと洗腸が身近になって選択肢の1つになると良いのではないかと思いました。
インタビュアー:辻仲病院柏の葉 皮膚・排泄ケア認定看護師 長岡真裕美 先生
プロフィール
